冠動脈疾患の治療と心臓リハビリテーション

心臓病をもつ人が、その体や心の問題を解決して普通の生活に復帰するにはどうしたらよいのか? 

心臓リハビリテーションは、そのためのもっとも適した治療法です。 冠危険因子を解消して心疾患を改善し予防するための様々な治療法 〜 運動療法を始め、薬物療法、教育プログラムやカウンセリングなど 〜 がひとつに統合されてできています。 心臓リハビリテーションは、動脈硬化病変を安定化したり、動脈硬化の進行を遅らせ、改善さえすることができるので、心臓病の再発を防ぎ寿命をのばすのです。

 心臓リハビリテーションプログラムは、心疾患をもつ人にとって、いわば無駄なく効果的に予防治療の技術を身につけることができる貴重な学びの場ともいえるでしょう。

(2005 AHA/AACVPR scientific statement 改変)

Fact.1
心筋梗塞後の再発予防に心臓リハビリは必須の治療
心リハは、心筋梗塞後の総死亡、心臓死心筋梗塞の再発を減らすことが分かりました。
Fact.2
狭心症には、まず心臓リハビリ
心臓リハビリテーションが、薬物療法単独に比べて優れていることは明かです。さらに、ステント治療よりも心リハを受けた方がかえってその後の経過が良好であるという報告もあります。
Fact.3
心臓リハビリテーションでバイパス手術の効果を高める
心臓リハビリテーションはバイパス血管を長持ちさせ、手術でつないだ血管がつまるのを防ぎます。
Fact.4
心不全にこそ運動療法・心リハ
過剰な安静は身体機能の悪化を招きます。運動療法は心不全の身体機能を改善し寿命を延ばす最先端医療です。
Fact.5
心リハは弁膜症手術後の体力回復に極めて有効
弁膜症を治してもその後で心リハをするかどうかで、体力の改善の差は歴然としてしまいます。
Fact.6
運動療法は慢性閉塞性動脈硬化症(ASO)治療の基本
歩くと足が痛くなる病気、慢性閉塞性動脈硬化症。運動療法がめざましい効果を見せてくれます。
Fact.7
治療の真の目的とは?心リハの役割
臓器の回復よりも、あなた自身の健康を取り戻すことが最大の目的です。心臓リハビリテーションは、身体のみならず精神の健康を回復させる効果があります。

狭心症や心筋梗塞は、心臓の表面を走り心臓が動き続けるための栄養や酸素を供給している血管(冠動脈)の狭窄や閉塞によって引き起こされる病気です。 ですから、狭心症や心筋梗塞は、心臓の病気というよりはむしろ冠動脈の病気ととらえられるので、これらの病気を冠動脈疾患と呼びます。 急性心筋梗塞は血栓による冠動脈の突然の閉塞でおこる病気で、激烈な胸痛を伴い発症した人の1/3は病院にたどり着くことなく死亡するといわれる重篤な疾患です。 この場合、一刻も早く冠動脈の閉塞を解除することが最善の治療となりますから、冠動脈の閉塞部位を小さな細長い風船で押し広げたりステントという筒状の金網を入れる方法(PCIと呼びます)が緊急に行われます。 また、狭心症の中でも発作が頻回に起こったり、胸痛が悪化してくるような不安定狭心症と呼ばれるものは、心筋梗塞へ移行する可能性が極めて高いため心筋梗塞と同じ治療方針がとられます。 一方、薬によって胸痛発作のコントロールがついたり、胸痛がそれほどひどくなく、いつも同じ程度で安静やニトログリセリン錠舌下ですぐに落ち着いてしまうような狭心症は安定狭心症といい、 こちらは、動脈硬化による冠動脈の狭窄でおこるので不安定狭心症や心筋梗塞と違い死に至るようなことはあまりありません。

冠危険因子

このように同じ冠動脈疾患であっても、その成り立ちやその後の経過が大きく異なるので、治療法も冠動脈疾患の状況に応じてベストのものを選ぶべきです。 したがって、理想的な狭心症治療は、まず重症度を評価(冠動脈の狭さが重症度ではありません)し、真に風船治療やステント治療が必要な場合をのぞき、 まず心臓リハビリテーションで狭心症症状と「冠危険因子」(図)のコントロールを開始し、その経過中に胸痛などの症状の悪化がみられる場合には速やかに風船治療ステント治療に入る、 安定して経過する場合はそのまま心臓リハビリテーションを継続するという道筋を通るべきといえましょう。

また、すでに風船療法ステント療法による治療を受けた方は心臓リハビリテーションは不要なのでしょうか? いいえ、全くその反対です。たしかに風船療法ステント療法がうまくいけば日常生活で生じる胸痛発作から速やかに解放されますが、そのままでは、せっかくの効果も長続きしません。 その理由の一つは風船療法ステント治療を施した部分が再び狭くなること(再狭窄)であり、また、それ以上に多い理由は新しい狭窄病変の出現です。 事実、狭心症や心筋梗塞で風船療法ステント療法を受けた人の7割は10年間のうちに再び狭心症や心筋梗塞を起こしています。 つまり、この風船療法ステント療法は冠動脈の狭窄や閉塞を解除するために行われるのであり、けっして、冠動脈疾患の原因を治してくれる治療ではないということです。 狭心症や心筋梗塞治療の本当のターゲットは、冠動脈の狭窄や閉塞を起こす原因「冠危険因子」を解消することであり、冠危険因子を放置したままでは治療したとはいえないのです。 今までの生活習慣や治療状況の問題点を明らかにして改善していくこと。真の治療には、あなた自身の行動が必要です。 狭心症や心筋梗塞の治療をPCIだけで終わらせず、「冠危険因子」の解消を目指す治療=「心臓リハビリテーション」に必ず参加しましょう。

→ 心臓リハビリテーションを実施している施設