病診連携

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心臓リハビリテーションの回復期・維持期の医療を担う開業医の先生方の心臓リハビリテーション室としての役割を果たしたいと希望しています

心筋梗塞後は重症度に関わりなくご紹介ください。心筋梗塞後アスピリンを処方するのと同じように反射的に心臓リハビリをオーダーすべきとAHAからもアナウンスされております。心室瘤形成やICM状態となったり侵襲的デバイスを用いてもコントロールがつかないような状況でも心臓リハビリテーションの効果はありますが、何より、そのような心臓にならないことが大事と思います。心筋梗塞後の方は、心筋梗塞再発のハイリスク群です。包括的心臓リハビリテーションは、心筋梗塞後の心血管イベントを30%~50%減少させると報告されています。心筋梗塞後の状況によらず、再発予防効果と予後改善効果のある心臓リハビリテーションに患者を参加させてください。

安定狭心症患者はデバイスの使用の有無にかかわらずご紹介ください。安定狭心症における治療方針は明らかに運動療法を含むオプティマルメディカルテラピー(OMT)へ向かっています。しかし心臓リハビリテーションはPCIなどのインターベンション治療と対立する治療法ではありません。特に繊細な技術をもつ日本の循環器内科医の治療成績は諸外国とは比べものにはなりません。そこで初期の治療方針として心臓リハビリテーションによるOMTを選択し、その中でコントロールがつかないあるいは重症化が認められるハイリスク群を抽出しインターベンション治療につなげていくのが日本でのオプティマルストラテジといえるでしょう。また、DESの使用はTLRの抑制効果はあるものの、新規病変の出現やプラークの不安定化を防ぎません。デバイス使用後も心臓リハビリテーションは必須です。

慢性心不全患者はNYHA class IVをのぞきすべて心臓リハビリテーションの適応があります。心不全の予後を十分に改善する単独治療は存在しません。ACEIもβブロッカーもNIPPVもCRTも予後の改善効果は限定的です。したがってあらゆる治療を動員するべきといえます。有酸素運動とレジスタンス運動を行うことで心不全の予後を規定する運動耐容能と換気効率が改善し、心臓リハビリテーションの予後改善効果は証明されています。心臓リハビリテーションを慢性心不全治療のベースとして取り入れてください。自己体重管理と心リハプログラム参加での体重管理は心不全悪化を症状出現前に捉え急性増悪を未然に防ぐことができます。減塩をはじめ体重管理は心臓リハビリテーションで身につけていく事ができます。

冠動脈バイパス術後は心臓リハビリテーションのよい適応です。冠動脈バイパス術の成功率は日本においては極めて高く安全な治療です。手術侵襲の点でもOPCAB等により改善がされてきていますが、それでもPCIにくらべ心負荷は大きく術後の運動耐容能低下が強いことは否定できません。心臓リハビリテーションはバイパス術後の短期から長期の運動耐容能を改善し、グラフト開存率を高める効果を持ちます。また、CABG後慢性期の予後を決定するのは脳血管障害などバイパスグラフトがカバーしきれない領域に由来する問題です。この心臓外血管障害を予防しCABGの遠隔成績をより揺るぎないものとするためには、心臓リハビリテーションによる冠危険因子の十分な管理が有効です。

弁置換術後は、臓器レベルでは問題が解決されていますが、身体レベルでの心不全状態からは脱してはいません。運動療法を含む心臓リハビリテーションは心不全状態=運動耐容能低下状態から極めて良好に患者の身体状況を改善します。心臓リハビリテーションにより心不全の悪性サイクルから離脱できれば、かなりの症例で運動耐容能は同年齢健康人と同レベルかそれ以上まで回復する可能性があります。

慢性閉塞性動脈硬化症ASOの治療方針の原則は、下肢循環障害の改善のみならず脳・心・腎等、全身主要臓器障害への対応と動脈硬化リスクファクターの管理です。ASOの予後が極めて悪いのは患肢に原因があるわけではなく全身の動脈硬化を伴うからです。Fontaine IIの間欠性跛行初期の治療の第一選択は運動療法であり、ましてや、ABI低下のみを示すFontaine IのASOには、たとえアンギオ上高度な狭窄であってもまず運動療法を選択してください。Fontaine IIのASOではPTAはごく短期に症状を改善させる効果はありますが、長期的には運動療法による改善と変わりがありません。また、血行再建には全身の動脈硬化を抑制する効果もありません。間欠性跛行の治療の最初のアプローチとして心臓リハビリテーションを取り入れてください。