プログラム概要

肥満は、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病などの生活習慣病や、心血管疾患、睡眠時無呼吸症候群、脂肪肝などのリスクを高める重要な因子です。健康的な体重を維持することは、これらの疾患の予防・改善に不可欠です。

当院では、肥満症やそれに伴う健康リスクをお持ちの方を対象に、医学的根拠に基づいた多職種連携による体重減量指導プログラムを提供しています。医師、管理栄養士、理学療法士、保健師がチームとなり、食事療法、運動療法、行動変容支援を通じて、健康的で持続可能な体重管理をサポートします。

📌 対象となる方

本プログラムは、主に以下のいずれかに該当する方を対象としています。

1. BMI 25以上で合併症のある方

BMI (Body Mass Index) が25kg/m²以上で、かつ以下のいずれかの疾患をお持ちの方:

  • 高血圧症
  • 脂質異常症
  • 2型糖尿病
主なアプローチ:
  • 個別食事指導
  • 個別運動指導
  • 行動変容支援
  • 必要に応じた薬物療法

2. BMI 35以上の方 (高度肥満)

BMIが35kg/m²以上の方。

主なアプローチ:
  • 個別食事指導
  • 個別運動指導
  • 行動変容支援
  • 地域連携: 肥満治療薬には使用にあたり施設基準が必要なものがあります。当院で処方できない場合には紹介いたします。

📌 プログラムの構成と流れ

当院の体重減量プログラムは、個々の状態に合わせて段階的に進められます。

1

初回評価(Week 0)

目的: 個別リスク評価、目標設定、ベースライン測定

現在の健康状態、生活習慣、減量の動機などを詳しく評価し、個別化されたプログラムの土台を作ります。

  • 呼気ガス分析: 間接熱量測定により、安静時代謝量(実測REE: Resting Energy Expenditure)を正確に測定します。
  • 身体計測: 体重、BMI、体脂肪率、筋肉量、腹囲などを測定します。
  • 血液検査: 脂質、肝機能、血糖(HbA1c)、インスリン抵抗性、炎症マーカーなどをチェックします。
  • 腸内フローラ検査(オプション): 腸内環境と肥満の関連を評価します。
  • 運動耐容能評価: 心肺運動負荷テスト(CPX)または6分間歩行テストで、安全な運動強度を決定します。
  • 生活習慣評価: 食事、運動、睡眠、喫煙、ストレスなどについて詳しくお伺いします。
  • 多職種カンファレンス: 評価結果に基づき、医師、管理栄養士、理学療法士、保健師が連携して目標体重や介入方針を決定します。
2

初期集中介入期(Week 1–12)

目的: エネルギー収支の改善と生活習慣の変容

具体的な減量と生活習慣の改善を集中的に行う期間です。

  • ✅ 食事指導(管理栄養士):
    • 目標エネルギー摂取量: 実測REE × 活動係数(PAL: Physical Activity Level)− 500〜750kcal/日を目安に設定。
    • 食事パターン: 地中海式食事やDASH食など、科学的根拠のある健康的な食事パターンを導入します。(参考: PREDIMED Study)
    • 食事記録: 毎食や毎週の食事内容を記録し、管理栄養士と振り返りを行います。
  • ✅ 運動指導(理学療法士):
    • 有酸素運動: 週150分〜300分の中等度運動(例: 速歩、サイクリング)を目指します。
    • 筋力トレーニング: 週2回程度、主要な筋肉群を対象に行います。
    • 実施形態: 当院の運動療法施設での直接指導、またはオンライン(Zoom+動画配信)での指導を選択できます。
  • ✅ 行動変容支援(保健師):
    • 目標設定: SMART原則(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)に基づいた具体的な目標を設定します。
    • 自己モニタリング: 体重や歩数などを記録し、自身の行動を客観的に把握します。
    • 認知行動療法的アプローチ: 食行動の記録と振り返りなどを通じて、思考や行動パターンを変えるサポートをします。
    • グループセッション(月1回): 他の参加者との交流を通じて、モチベーション維持や情報交換を図ります。
3

維持期(Week 13–52)

目的: リバウンド防止と改善された生活習慣の定着

減量した体重を維持し、健康的な生活習慣を継続するための期間です。

  • 月1回の再評価と個別面談(栄養・運動・生活)で進捗を確認し、課題に対応します。
  • 必要に応じてオンライン支援(アプリやLINEなど)を継続します。
  • 減量維持に成功している人々の行動戦略(参考: NWCR=National Weight Control Registry)などを参考に、リバウンド防止策を学びます。
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フォローアップ期(1年以降)

目的: 減量維持、再発防止、代謝指標の改善状況の追跡

長期的な健康維持を目指します。

  • 年2〜3回の定期的な評価(体重、血液検査、生活習慣チェック)を行います。
  • 医師による肥満関連合併症(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)の継続的な管理を行います。

🔍 成果指標(アウトカム)

プログラムの効果を客観的に評価するために、以下の指標を定期的に測定し、目標達成度を確認します。

指標 評価タイミング 目標値例
体重減少率 3ヶ月・6ヶ月・12ヶ月 開始時体重の5〜10%以上減少
HbA1c (糖尿病の方) 3ヶ月毎 6.5%未満(合併症予防)
※個々の状態により目標値は異なります
LDLコレステロール (悪玉) 6ヶ月毎 120 mg/dL未満
※リスクに応じて目標値は異なります
QOL (生活の質: SF-36など) 6ヶ月毎 ベースラインからの向上傾向
身体活動量 毎月(運動記録) 週150分以上の中等度活動

※目標値はあくまで目安であり、個々の患者様の状態や合併症、年齢などを考慮して設定します。

ご予約・お問い合わせ

体重減量指導プログラムへの参加をご希望の方、詳細について知りたい方は、お気軽に医師またはスタッフにご相談ください。

  • 電話番号 027-352-1270
  • 受付時間 診療時間内(平日9:00-12:00 / 14:00-18:00、木・土曜9:00-13:00)

ご注意

本プログラムは、一部を除き自費診療となる場合があります。保険適用の可否や費用については、診察時に医師にご確認ください。

参加には医師の診察が必要です。まずは診察をご予約ください。